今号は前号からの続きになります。
腸のご機嫌によって生じる症状と便の様子についていくつか書きます。
主にお腹の下の部分のキリキリとした痛み、そして手で押さえたくなるような苦しさを感じる痛みに続いてお手洗いに走るという経験は誰しもがお持ちでしょう。量の多い排便だったり、やや激しい下痢だったりと、内容物がすっかり出切ってしまうと、痛みも去って笑顔が戻り、元の活動に復帰できるというものです。
一方、お腹の痛みが繰り返し起きるにも関わらず、便がわずかずつしか出なかったり、残便感だけが続いて肝心の便は一向に出切らず、お手洗いからいつまでも立ち上がれないことがあります。このようなお腹の状態を”渋り腹(しぶりばら)”と呼んでいます。渋り腹の原因も様々ありますが、日頃から便秘気味、下痢気味の人は、食べ物の種類や食べ物の量、冷たい飲食物に気を付けながら生活することで、ある程度その症状を押さえることができるものと思います。また便に血液が混じったり、粘り気が多い便になったりすると、腸管内部に問題が生じている可能性が高いと考えます。
便の出が悪く太さが細くなり、細切れになったりする時は、大腸内に良性あるいは悪性の腫瘍がある可能性があり、医療機関の受診が必要になります。
一方、学童期から40代くらいまでの比較的若い年齢層の中で、心理的不安や精神的ストレス、お腹に加わる温度変化などに腸がその都度反応してしまい、下痢や便秘を長期間に渡って繰り返して苦しんでいる人がいます。これは病院を受診しても解剖学的・病理学的に大きな問題がなく、”過敏性腸症候群”と診断されます。
この他、腸内にガスがたまり度々おならが出る、お腹が張って苦しくて気持ちが良くないなど、腸は目まぐるしく顔色を変えるのです。
三療(鍼・あん摩・指圧・マッサージ・灸)の治療では、これまで記したように時々刻々変わる腸の内部の変化に全身各所にアプローチして効果を引き出すことができます。下痢や便秘を解消する効果のあるツボが腰や足には、いくつもあります。またお腹では下腹部を中心に多くのポイントがあり、これらに軽微な刺激を与えて治療します。特にお腹が冷えていることが多いため、優しい灸を施して温めたり、心地よいマッサージを行ってお腹の内部の不調和を整えます。
過敏性腸症候群のように、精神的な影響やそれに伴う自律神経の変調が起こっている場合は、全身に渡って表れている症状を解消することでお腹の苦しみを軽減することができます。人それぞれに三療刺激に対する反応の出方は大きく異なりますが、薬にうまく適応できていない方、あまり薬を使用したくないと思う方はぜひお試しください。 <第42号>