腕を動かす時には、必ず肩を脇から離すと同時に肘(ひじ関節)が曲がり、後ろ側の出っ張った部分がおおよそ外側に突き出る格好になります。その出っ張った先は尖った骨で、”肘鉄(ひじてつ)”と呼ばれ、時に少し悪い仕草に使われます。また”頬杖をつく”際の杖の先の部分になります。
肘の関節は、上側の上腕骨、下側親指側の橈骨(とうこつ)と小指側の尺骨(しゃっこつ)の三つの骨が関わってできています。そしてそれぞれの骨が相互につながり合い3つの関節が作られ、肘より先の部分(前腕)を曲げる、伸ばす、回す動きができるようになっています。ただ横方向への動きは、肘を深く曲げた際にのみ僅かにできる程度の仕組みになっています。
上に書いた肘の尖った部分は、前腕の小指側の尺骨の一部で、これは解剖学では肘頭(ちゅうとう)と名付けられています。肘頭の皮膚は全身の中では耳たぶと並んで血液循環の悪いエリアで、冷えや乾燥、皮膚剥けが生じる部分です。
またこの肘頭の数センチ小指側にも内側上顆(ないそくじょうか)という突起があり、この間には縦に走る溝があってこの溝の中を小指や薬指を支配する尺骨神経と呼ばれる神経の本幹がはまり込んで通っています。
ここをぶつけてしまい、指がピリッと痺れて驚いた経験がある人も多いでしょう。この部位を強くまたは繰り返して刺激すると、小指や薬指に痛みや痺れ、運動麻痺が生じます。日頃から気を付けて大切にしておかなければならない部分です。
肘関節の手のひら側は、内側には内側上顆、外側には外側上顆(がいそくじょうか)という骨の突起があります。そこから手首や手指につながる多くの筋肉が始まっており、それらの筋肉は重なり合って盛り上がっています。この突起部や筋肉に痛みや炎症が生じます。
日常の家事、重い物の持ち運びの作業、テニス肘・ゴルフ肘・野球肘などのスポーツに伴って肘関節を過度に曲げ伸ばしすることが原因です。
これら肘関節の障害では、整形外科での病態の診断、炎症を押さえる湿布薬の処方、悪化しないための可動域の制限を目的とする各種固定が行われます。
三療(鍼・あん摩・指圧・マッサージ・灸)治療は、整形外科での治療と並行してできるだけ早いうちに始めるのがベストです。悪化していくと肩や手にまで症状が広がってきます。
多くが炎症症状で、比較的狭い範囲やスポット的な部位が対象であるため、短時間でアプローチもし易く、効果も出しやすいと考えます。これらの症状に丁寧にアプローチして三療治療を施すことが全快への近道です。<第47号>