今回は三療の中の灸について書きます。
灸は、頭に「お」が付されて「お灸」と呼ばれることが多く、鍼と合わせ「鍼灸」と表記されることもあります。東洋医学では古来からの一つの療法として用いられてきました。
灸の材料、成分
植物の“よもぎ”です。
乾燥させて、葉の裏の部分に密生している白色の毛を集めて粉砕してできたものが“もぐさ”です。
もぐさにはチネオールと呼ばれる精油が含まれていて、これが灸の芳香の元になると共に、皮膚からは塗り薬と同じように成分が吸収され、消炎・鎮痛に効くとされています。
灸の種類と使い方
灸は「据(す)える」と言いますが、もぐさを皮膚の上に直接置いて燃焼させて痕を残す有痕灸と、もぐさと皮膚の間に紙や“ビワの葉”などを敷いた上にもぐさを置いて燃焼させ、通常は痕を残さない無痕灸とがあります。
数十年前の高齢者には、背中や足に黒い灸の痕がついていた人がよく見受けられました。これが有痕灸です。世間に広く知られている「せんねん灸」は、紙パルプの台座の上にもぐさを円筒形に包んで置いて燃焼させるもので無痕灸の代表です。その他にも無痕灸には、もぐさをビワの葉や塩の上に置いたり、入れ物の中に入れて温度を上げて皮膚の上に置く温灸など、多くの種類があります。
もう一つ、灸と鍼とのコラボ治療として、刺した鍼の持ち手の部分に“もぐさ”を巻き付けて燃焼させて灸と鍼との療法の効果を同時に与える「灸頭鍼」があります。
灸の効能
灸の本来の効能は、もぐさの成分が皮膚から吸収されることと、鍼と同じようにツボに的確に刺激を与えることです。最も効能が大きいのは有痕灸ですが、痕が残ることから近年は手軽さも受けて、無痕灸のせんねん灸が広く使用されるようになりました。
糸くずのように小さく細いもぐさを燃焼させて痕がほとんど残らない灸を据えることができれば効果的には最良ですが、これにはかなりの熟練が必要です。
また灸そのものの香りのアロマや温熱の効果もありますから、これらが合わさって灸治療の効能が生まれると言っていいでしょう。
本来、灸治療は灸師が行うものです。せんねん灸を使用するとしても、灸師にポイント(灸点)を取ってもらってから据えることをお勧めいたします。
<第5号>