しなやかな関節の動きができる体操選手、柔らかくポチャポチャした赤ちゃんの体、あるいは寒さで縮まり動きにくくなった硬い体など、人の体の動きや状態を柔らかさや硬さで表現することは多くあります。
体は「硬いより柔らかい方がいい」というのが一般的ですが一人として同じ人はいません。今回は何故この違いが出るのかについて書きます。
細胞は蛋白質・脂質・水などの成分で構成されていますが、その微妙な割合の違いや遺伝因子などによって人ごとの細胞の性質が異なっています。
「私は関節が硬いんです」などと自分を評する方がいますが、これは先天的などうしようもない要素であるためある程度はやむを得ません。とはいえ後天的に変えていくことが出来ることも事実ですからご安心ください。
体の柔らかさと硬さの違いに影響するのは、皮膚の下にある組織の結合性、筋肉の収縮性と伸張性、関節の可動性の三つです。
1.皮膚とその下にある組織の結合性:
皮膚を平面上で動かすと、数ミリしか動かない箇所と10cm近くも動く箇所があります。背部や胸部などは大きく、頭部や向う脛などでは小さく、人によってその差はかなりあります。
2.筋肉の収縮性と伸張性:
筋肉は骨から骨に付着して関節を動かしたり、皮膚から皮膚へ付着して顔の表情を作ったりする役目を果たします。ゴムのような単純な伸び縮みではなく、機能的な特殊な伸縮をするので、年齢、筋力、瞬発性などによって伸び縮みの大きさに差が出ます。
3.関節の可動性:
関節は動く方向と動く範囲(可動域)がそれぞれの関節で決まっています。動く方向は関節を作る骨同士の構造で、動く範囲は動かそうとする筋肉の働きで決まっています。ただ可動域については、動かそうとする筋肉と反対の方向の働きをする筋肉(拮抗筋)や骨同士を縛って固定する靱帯と呼ばれる伸び縮みしない装置が動きの制限・調整をすることで、適切な動きの範囲が決まります。筋肉の作用のアンバランスや靱帯の縛りの強さによって関節の動きの範囲が広がったり狭まったりします。
近年「ストレッチ」や「ヨガ」が流行していますが、単に関節を曲げ伸ばし、筋肉を引き伸ばすだけでは本来の効果は発揮できません。拮抗筋や周辺を埋める大量の組織を三療(鍼・あん摩・指圧・マッサージ・灸)治療で適切に緩めたり和らげたりすることでそれらの効果はより高まるでしょう。三療で組織全体を柔らかくする効果を実感してください。 <第8号>