鼻から吸い込まれた空気は肺に入り全身にゆき渡ったのち、再び肺に戻って口から吐き出されます。
この間に酸素は赤血球によって体の隅々にまで運ばれ、不要となった二酸化炭素が排出されます。
この一連の流れを”呼吸”と呼んでいます。
呼吸は成人の安静時で1分間に16~20回繰り返され、8~10ℓ(1回当たり500㎖)の空気が出入りします。
肺は心臓などと共に、“胸郭(きょうかく)”と呼ばれる肋骨(ろっこつ)をはじめとする37の骨と、肋間筋などの筋肉で覆われるかご型の枠の中に収まっています。この胸郭は、後ろ側の背骨(胸椎)と前側の胸骨との間に左右対象の肋骨が関節によって連なり、肋骨間には内外二層の肋間筋がびっしりと張っています。
肺に空気を吸い込むと肋骨は上外方向に動いて広がり、空気を吐くと下内方向に動いて縮み、スムーズな呼吸ができるような仕組みになっているのです。
近年はIT化の進展、静かな環境を好む傾向、加えてコロナ禍の影響など”しゃべる”量や回数が減り、大きな声を出す機会が減っているのではないでしょうか。このことは、肺への空気の出入りが少なくなって、肺の伸び縮み、胸郭の動きの低下などを招くことに繋がっているのです。
日頃から大きな声でしゃべる人は体内に多くの酸素が取り入れられ、元気です。
自然豊かな森林に行くと自然に呼吸が大きくなります。ラジオ体操の最初と終わりには深呼吸が組み込まれています。歌を歌う、吹奏楽を演奏する、吹き矢に興じるなどは、肺を最大限に伸び縮みさせ、これに伴って胸郭もスムーズに動くため、身体全体に良い影響を与えています。これとは逆に、肺に病状があればもちろんのこと、胸郭や呼吸に関わる関節や筋肉に痛みや不具合があれば円滑な動きは損なわれ、呼吸を制限してしまうこととなります。
背中が痛い、肩が凝るなどといった胸郭周囲の症状に対する当院の三療(鍼・あん摩・指圧・マッサージ・灸)治療では、呼吸の深さや胸郭の動きにも着目し、これらを制限している痛みや筋肉の緊張を取り除くことで良好で長持ちする効果の実現を目指しています。
また呼吸に基いた胸郭の動きのトレーニングや深い呼吸を推奨するアドバイスを行うことで、よりスピーディーな回復を助け、痛みなどの予防に寄与できるよう取り組んでいます。
”十日間三療コラム”は今号で25号となりました。
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