年度が変わる3月。そして新しい年度が始まる4月。
また進学や就職のステップとしての一つの区切りの時期として、ほとんどの人が経験する人生の中の一コマ。
4月には多くの新入生や新社員が新しい場所に身を置きます。
親元を離れての生活が始まる人も多いでしょう。
不安を抱きながらも学校や会社で夢や希望に胸を膨らませての日々が始まります。
“○○さん、○○君”と周囲から盛んに声をかけられたり、歓迎会も行われることで新しい人達との出会いがあり、楽しい雰囲気で自分の居場所と居心地の良さを実感していきます。
しかし、ゴールデンウイークが終わると、校内や社内の注目ムードが去り、4月のような特別ではない通常の現実の日々が始まります。周囲の人達の関係性も見えてきて好ましくない事にも相対する場面が出てきます。
夜、一人になると、学業や仕事に対する不安や実家に帰ってみたいなどという里心が急に湧き上がり沈痛な気持ちに陥ることもあります。朝、目覚めると、今度は出かけたくなくなり、人にも会いたくないなどの後ろ向きな気持ちになります。
これをかつてはだれもが”五月病”と呼び、周囲の人たちは少し静観してみたり、元気を出すよう声をかけて促したりしたものです。そしてその名称のごとく6~7月にもなればこの病気は自然に治り、元気になると暗黙の了解事として理解していたように思います。
けれども最近はどうでしょうか。
コロナ禍の影響もさることながら、3月以外の月の退社、4月以外の月の入社が増え、まとまった新入社に対する歓迎のムードも減り、楽しさのないうちに同じような症状を抱く人が増えているのではないでしょうか。言い換えれば「五月病」以外の全ての月の病気に命名できる現実があるように思えます。
そしてこの”五月病”と呼ばれていた病気は、今や”適応障害”、”うつ病”という診断名として病名のレッテルが貼られてしまいます。こうなると組織ぐるみでの対応がなされ、当事者本人も事実が認められた中で暮らすことができる環境が整ってしまうため、ややもすると7月には治らない、長引いてしまうことに繋がるのです。
ほとんどの人は7月には治る五月病でありたいものであるはずです。早く通常の元気な気持ちに復して、日常の楽しい生活に戻りたいはずです。三療(鍼・あん摩・指圧・マッサージ・灸)がこの病にアプローチするためには、体に現れている反応を適切に捕らえて和らげ、心の症状に対しては親身な受け止めで会話を交わせることが大切であると考えて治療に臨んでいます。 <第26号>